家庭・日常で育つラーニングマトリックスの実践
トレーニングも、教育も、仕事も、そして子育ても——すべては「学び」です。
神戸・六甲道のNeeDS(ニーズ)が大切にしているのは、“学び方を学ぶ”ということ。
それはジムの中だけで完結する話ではなく、日常生活の中、家庭の中、職場や学校の中でこそ、本当に意味を持ち始めます。
私たちは、トレーニングを通して「筋肉を育てる」だけではなく、「考える力」「伝える力」「感じ取る力」を育てたい。
なぜなら、学びとは“人生の筋トレ”だからです。
ここでは、家庭や日常における「ラーニングマトリックス(学びの順序)」の実例を交えながら、人がどのように成長していくのか、そしてそれをどう支援すべきなのかを、一緒に見ていきましょう。
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【子どもに勉強を教えるとき――「分かった?」よりも「何が分かった?」】
あるお父さんが、夜の食卓で子どもの宿題を見ています。
「この算数の問題、分かった?」
子どもは元気に「分かった!」と返事します。
でも次の瞬間、もう一度同じ問題を出してみると、手が止まる。
「えっと…あれ?」
こういう光景、どこの家庭にもありますよね。
実はこのやり取りこそ、学習定着の落とし穴。
「分かった?」という問いは、理解を確認しているようで、実際は“返事を求めているだけ”なのです。
NeeDSメソッドでは、ここで一歩踏み込みます。
「何が分かった?」「どう考えたの?」と聞いてみる。
そうすると、子どもは少し考えながら、「ここをこうしたら合ってた」「この式を使った」と説明します。
これがアウトプット。
自分の言葉で説明することで、理解が整理され、記憶が深く定着するのです。
親が「説明してごらん」と促すことは、トレーナーがクライアントに「今の動きを言葉にしてみて」と問いかけるのと同じ。
その瞬間、学びは“受け身”から“主体的”に変わります。
そして、この問いかけの習慣が、将来の自己学習能力を高める土台になるのです。
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【仕事の場面――“できない”のではなく、“まだ②の段階”】
会社の新人研修でも、似たような光景をよく目にします。
新入社員が上司に報告します。
「昨日の資料作成、言われた通りにやったんですけど…うまくいきませんでした。」
上司は言います。「何でできなかったんだ?」
でも、もし上司がラーニングマトリックスを理解していれば、アプローチは違ってきます。
彼・彼女は今、「意識はしているけど、まだできない(②の段階)」にいる。
つまり、理解はあるが、再現するだけの経験値や感覚がまだ足りない状態です。
ここで責めたり、諦めたりしてしまうと、本人は“①無意識・できない”に戻ってしまう。
それは、学びを止めてしまう最ももったいない瞬間なのです。
「なるほど、今は②だね。じゃあ一緒に③を目指そう。」
そんな声かけができる上司や先輩がいるチームは、必ず成長します。
これは、トレーニングでいう「今はできないけど、感覚が出てきたね」と同じ構造です。
人は段階を経て成長します。
できないことが“悪”なのではなく、今が“学びの途中”であることを認識できるかどうかが鍵なのです。
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【家庭の食卓――ラーニングピラミッドを自然に取り入れる】
学びの定着を図る上で、実は家庭ほど良い環境はありません。
たとえば、家族の夕食中に「今日、学校で何を習ったの?」と聞く代わりに、
「今日、一番面白かったことを“家族に先生として”教えてみて」と促してみましょう。
すると、子どもは「今日は理科で実験したんだけどね!」と嬉しそうに話し始めます。
この瞬間、彼・彼女は“教える前提で話す”モードになっている。
それこそが、ラーニングピラミッドの頂点「他人に教える」の段階です。
説明するためには整理が必要。整理するためには理解が必要。
つまり、教える行為そのものが最強の学びなのです。
そしてこのサイクルは、大人にも効果絶大です。
例えば、ゴルフのレッスンで学んだスイング改善を、家に帰ってパートナーに説明してみる。
「今日ね、腰から動かす練習をしたんだ。骨盤を先に回して、胸は遅らせるんだよ。」
説明しているうちに、自分の中で感覚と理論がつながり、「あ、こういうことか」と再理解が生まれます。
まさに、家庭でのラーニングピラミッド。
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【子育てとトレーニングの共通点――“待つ力”】
学びも、トレーニングも、育児も、共通して大切なのは「待つ力」です。
親が、トレーナーが、上司が、「早くできるように」と焦ると、相手は混乱します。
NTMでいう②⇄③の間の“もがき”の時間こそが、一番成長している瞬間。
しかし多くの大人は、その“途中”を評価できないのです。
子どもが靴ひもを結ぶ練習をしているとき、手を出したくなります。
「ほら、こっちの手を使って!」
でもそこを我慢して見守る。
結べなくても、時間がかかっても、その間に脳と身体は必死に連携しています。
これはトレーニングと全く同じ。
スクワットのフォーム修正をしているクライアントに、全部を言葉で説明するのではなく、
「今の感覚、どう?」とだけ聞いて、考える時間を与える。
“待つ”ことは、最も高度な指導技術です。
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【家庭におけるラーニングマトリックスの4段階】
①無意識・できない
…家事を手伝おうとしても、どこから手をつけていいか分からない状態。
「お皿洗いお願い」と言っても、子どもはスポンジを持って立ち尽くします。
②意識できる・できない
…洗い方を教わって意識しているけど、力加減が分からず泡だらけ。
でも、これは最も大事な段階です。ここで「何やってんの!」と怒ると、①に戻る。
③意識できる・できる
…少しずつ手順を覚え、きれいに洗えるようになる。親が褒めることで自信がつき、再現性が上がる。
④無意識・できる
…何も言わなくても、自分で皿を流し、拭き取りまで終わらせる。
このとき、親は驚きます。「いつの間に、こんなにできるようになったんだろう!」
この“いつの間にか”が、まさにラーニングマトリックスの結果なのです。
日常生活の小さなことでも、この4段階を意識して接するだけで、家庭が成長のフィールドに変わります。
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【夫婦関係・人間関係にも応用できる】
ラーニングマトリックスは、実は人間関係にも応用できます。
たとえば、パートナーに何かをお願いするとき。
「ちゃんと聞いてる?」「分かった?」ではなく、
「どういう風にやってみようと思う?」と聞いてみる。
これも同じ構造。アウトプットを引き出し、当事者意識を生み出します。
家庭内のコミュニケーションも、職場の会話も、
「教える・聞く」ではなく、「共に考える・共に学ぶ」に変わる。
その積み重ねが、信頼関係を深め、相手の自発性を引き出します。
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【日常こそが最強のトレーニングジム】
神戸・六甲道のNeeDSのトレーニング現場では、
「ジムでの1時間より、日常の中での意識1秒を大切に」とよく伝えます。
トレーニングの目的は、ジムの外での“身体と心の使い方”を変えることだからです。
家での姿勢、職場での立ち方、移動中の歩き方、会話中の表情、
すべてがトレーニングの延長線上にあります。
たとえば、子どもに話しかけるときも、姿勢を整えて、呼吸を落ち着けて話す。
その一瞬で“伝わる力”が変わります。
それは筋肉のトレーニングと同じく、“習慣の筋力”を育てることなのです。
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【まとめ:学びは特別な時間ではなく、毎日の中にある】
ラーニングマトリックスの4段階は、特別な理論ではありません。
それは、毎日の中で誰もが経験している“成長のリズム”です。
ただし、それを意識できるかどうかで人生の質が変わります。
家庭の会話、職場のやり取り、スポーツの練習、トレーニング指導——
すべての場面に“学びの順序”があります。
「分かりましたか?」ではなく、「何が分かりましたか?」と聞く。
「やってみなさい」ではなく、「どう感じた?」と聞く。
それだけで、相手の脳は活性化し、記憶は深まり、自信が芽生える。
NeeDSが伝えたいのは、“学びを生活に落とし込む力”です。
トレーニングとは、ただ筋肉を鍛えることではなく、
「考え方」「伝え方」「受け止め方」を整える生き方そのもの。
そして、その出発点はあなたのすぐそばにあります。
家族との会話、仕事の中の一言、鏡の前の自分との対話。
それがあなたの“ラーニングマトリックス”です。
今日、あなたが誰かに教えたこと、誰かから学んだこと——
その瞬間が、人生の中で最も美しいトレーニング時間なのです。
【学びの本質は“生き方のデザイン”にある】
学びとは、単なる知識の習得ではありません。
それは「生き方の質」を磨くプロセスそのものです。
そして、ラーニングマトリックスの4段階——①無意識・できない、②意識できる・できない、③意識できる・できる、④無意識・できる——は、人間の成長や人間関係、家庭生活のあらゆる場面に通じています。
たとえば、家族の中での会話ひとつを取ってもそうです。
親が子どもに「勉強しなさい」「片づけなさい」と言うとき、子どもは①や②の段階にいることが多い。
つまり「なぜそれをやる必要があるのか」をまだ理解していない、あるいは「やり方は分かっているけど続けられない」状態です。
そこに「早くやりなさい!」と圧をかけても、学びの回路は閉じてしまいます。
本当に必要なのは、「どうしたら続けられると思う?」「やってみてどう感じた?」という問い。
その一言で、子どもは“考える主体”に変わります。
この瞬間、学びは動き始めるのです。
家庭内での会話は、まさに学習の最前線です。
食卓での話題、出かける前の一言、寝る前の会話——それらすべてが「人を育てる時間」になります。
親がラーニングマトリックスを理解しているだけで、家庭の空気が変わります。
「うちの子はすぐ飽きる」と嘆く前に、「今は②の段階なんだ」と理解してあげる。
焦らず、待ちながら、「今、頑張っているね」と声をかける。
それだけで、子どもは安心し、③「意識してできる」への扉を開きます。
これは夫婦関係でも同じです。
相手が家事を忘れたとき、無意識のうちに「何でいつもできないの!」と責めてしまう。
でもその言葉は、相手を①に戻してしまいます。
正しいアプローチは、「どうすれば次に思い出せそう?」という問い。
これにより、相手は“改善を自分ごと”として考え始める。
これが②→③へのステップアップを支える言葉です。
日常のあらゆる関係において、人は学びの途中にいます。
相手の段階を理解し、必要なサポートを選べる人こそ、真の教育者であり、リーダーです。
そしてこれはトレーニングの現場にもそのまま当てはまります。
たとえば、NeeDSの六甲道店での指導シーン。
スクワットのフォームを修正しているクライアントが、「分かってるのに、うまくいかない」と言う。
それは②「意識できるけど、できない」状態です。
このとき、トレーナーが「できてないですよ」と指摘するだけでは学びは起きません。
「今、何を意識しました?」「どのあたりが難しかったですか?」と質問する。
クライアントが自分の言葉で答えた瞬間、脳内では“理解と動作”が再構築されます。
その積み重ねが③「意識してできる」状態を生み、やがて④の“無意識化”につながる。
まさに、家庭での学びと同じ構造なのです。
さらに言えば、人生そのものもラーニングマトリックスの連続です。
若い頃は、無意識に間違いを繰り返し、経験を通して②へ進む。
挫折や失敗を経て、意識的に改善し、③に到達する。
そしていつか、努力していたことが自然にできる④の境地に至る。
このプロセスを知っている人は、他人にも優しくなれる。
なぜなら、誰もが“途中”にいると分かっているからです。
「待てる人」「認められる人」「支えられる人」——この3つの姿勢が、学びの伴走者に必要な資質です。
そして、それを実践できる人は、家庭でも職場でも信頼される存在になります。
また、このマトリックスの考え方を組織に取り入れると、チームの空気が劇的に変わります。
上司が部下の段階を見極め、「今は②だから焦らなくていい」「③に上がるには一緒に振り返ろう」と関わる。
そうすれば、部下は安心して挑戦できる。
心理的安全性が高まることで、チーム全体のパフォーマンスが上がる。
まさに“学びの連鎖”が起きるのです。
そして最後に、これは私たち自身にも言えること。
誰かを育てる立場にある人ほど、自分が④ではなく③の途中にいると理解することが大切です。
「もうできている」「分かっている」と思った瞬間、学びは止まります。
学び続ける大人の背中を見せることこそ、最も強力な教育です。
学びは特別なセミナーや講義ではなく、毎日の選択の中にある。
朝、子どもにかける一言。
夜、パートナーに伝える言葉。
職場での後輩への声かけ。
その一つ一つが、学びをデザインする瞬間です。
「分かったか?」ではなく、「何を感じた?」
「うまくいった?」ではなく、「どこが難しかった?」
この言葉を使えるようになるだけで、人生の景色は変わります。
トレーニングも人生も同じです。
“できる”ようになるまでには、必ず“できない時間”が必要。
その時間を楽しめる人こそ、本物の成長者です。
ラーニングマトリックスは、学びの順序を示す理論であると同時に、
人を理解し、愛するための哲学でもあります。
家庭も仕事もスポーツも、すべての成長は「待つ」「認める」「教える」「信じる」から始まる。
そしてその先にある“無意識でできる”という境地は、努力を超えた自然体の美しさ。
学ぶこと、教えること、支えること。
そのすべてが、私たちの人生を豊かにするトレーニングなのです。
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