今回は私の尊敬する1人、 稲盛和夫さんの「言葉」から。

「バカな奴は、単純なことを複雑に考える。
普通の奴は、複雑なことを複雑に考える。
賢い奴は、複雑なことを単純に考える。」
稲盛和夫さんのこの言葉を初めて目にしたとき、私は全身に電気が走るような衝撃を受けました。
そして、心の中でつぶやいたのです――「ああ、俺はバカなヤツだった」と。
今、NeeDSメソッドの根底にあるのは、この言葉の思想です。
難しい理論を並べるよりも、誰にでも伝わる“シンプルな本質”を大切にする。
それが、私たちNeeDSが考える“賢いトレーニング”のあり方です。
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■ 「知識が増えるほど迷子になる」時期があった
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トレーナーとして駆け出しの頃、私はとにかく勉強に夢中でした。
解剖学、生理学、バイオメカニクス、キネマティックシークエンス…。
教科書や論文を読み漁り、全国のセミナーを渡り歩き、
頭の中は新しい理論や情報でパンパンになっていました。
当時の私は、「知識こそが実力」だと思っていたのです。
学べば学ぶほど自信がつき、複雑な理論を理解できたときには優越感さえありました。
ところが――現場に立つと、すべてが違って見えたのです。
頭で理解したことが、身体の動きとして再現されない。
理論上は正しいのに、クライアントの身体は思うように変わらない。
「なぜ?」と考えるたびに、私はさらに新しい理論を求め、
より難しい説明や専門用語を追いかけていました。
結果、私は自分でも気づかないうちに「複雑さの迷路」に迷い込んでいたのです。
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■ 専門知識は“武器”にも“壁”にもなる
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当時の私は、知識を得ることで“自分の正しさ”を証明しようとしていたのかもしれません。
選手や同業者との議論では、難しい言葉や理屈を並べて優位に立とうとしていた。
知らないことを隠すために、あえて専門的に話すこともあったと思います。
でも、そんな態度が人を動かすことはありません。
むしろ、相手との間に“壁”をつくっていたのだと、今なら分かります。
選手が理解できないままに言われた動作を繰り返す。
若手トレーナーが納得できないままに指導を真似る。
結果、みんなで同じ迷路の中をぐるぐる回っていたのです。
複雑な計算式を何度解いても答えが合わない――そんな感覚。
現場には、理論を超えた“現実の動き”があり、
そのリアルな人間の身体にこそ、答えがあるということに気づけていなかったのです。
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■ 稲盛さんの言葉が“原点”を思い出させてくれた
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そんな中で出会ったのが、冒頭の稲盛和夫さんの言葉でした。
「バカな奴は、単純なことを複雑に考える」
まるで自分のことを言われているようで、心に雷が落ちました。
私はそれまで、「考えること」「複雑に分析すること」こそが“プロフェッショナル”だと思っていました。
しかし、この言葉を見た瞬間、私は大きな勘違いをしていたことに気づかされたのです。
私はいつの間にか、“分かりやすさ”を置き去りにしていました。
本来、トレーニングとはシンプルなものであり、
「立つ・歩く・しゃがむ・伸ばす・ひねる」――
人が日常で行っている基本動作の延長線上にあるものです。
それを私は、専門用語と難解な説明で覆ってしまっていた。
理解を深めたつもりが、むしろ本質を遠ざけていたのです。
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■ “賢い指導”とは、難しいことを簡単に伝えること
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それから私は、「複雑なことを単純に考える」ことを意識するようになりました。
セッション中に使う言葉を見直し、
「難しい動作指示を、一番シンプルな表現で伝える」ことを心掛けました。
「骨盤を前傾して脊柱起立筋の過剰な収縮を抑えて」ではなく、
「おへそを少し前に出すように立ってみよう」。
「肩甲骨を内転させながら上腕骨の外旋を意識して」ではなく、
「背中でハートを作るようにしてみよう」。
そんな風に、子どもにも分かる言葉に置き換えてみたのです。
すると、不思議なことにお客様の反応がまったく変わりました。
「分かりやすい!」「イメージしやすい!」
その瞬間に動きの質が変わり、成果が出始めたのです。
指導の本質は、知識を“見せる”ことではなく、“伝える”こと。
本当に理解している人ほど、難しいことを簡単に説明できる。
それこそが、NeeDSメソッドの出発点になりました。
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■ シンプルは「浅い」ではなく「深い」
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ここで誤解してほしくないのは、
「シンプル=簡単」ではないということです。
知識を軽視するのではなく、
“深く理解した上で、わかりやすく表現する”ことが本当のシンプル。
知識があるからこそ、削ぎ落とせる。
経験があるからこそ、伝え方を選べる。
それが、私たちが目指す「賢さ」です。
トレーニングで言えば、
どれだけ高度な動作をするかよりも、
どれだけ正確に、そして自然に動けるかが重要です。
たとえばNeeDSの「ポイントスクワット」シリーズ――
ベースポジション、スライドスクワット、ローテーションスクワット。
これらも、見た目は非常にシンプルな動きです。
しかし、その中には「姿勢」「重心」「安定」「連動」といった、
人間の動作の本質がすべて詰まっています。
どんな競技でも、どんなレベルでも、最終的にはこの“シンプルな動き”に戻ってくる。
だからNeeDSでは、全スタッフが共通の言葉で「シンプルに、正確に」を徹底しています。
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■ シンプルであるほど、伝わる・続く・成長する
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トレーニングは、知識や技術を伝えるだけのものではありません。
人を導き、人を育て、人を前向きにする“教育”でもあります。
そのために必要なのは、専門性を“壁”にすることではなく、
誰にでも理解できる“橋”に変えること。
小学生でもわかる言葉で説明する。
一度聞いただけで身体が動くように伝える。
それこそが、NeeDSメソッドの本質です。
トレーニングの現場において、
「なるほど」「できた」「わかった」――この三つの言葉が出る瞬間こそが最高の瞬間です。
理論を並べるよりも、その人が自分の身体を“感じられる”ことの方が、何倍も価値がある。
だからNeeDSのスタッフは、常にシンプルを意識します。
余計な情報を削ぎ落とし、必要なことだけを伝える。
それが、最も効果的で、最も優しい指導だと私たちは信じています。
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■ “賢いトレーニング”とは、人生を軽くすること
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この稲盛和夫さんの言葉は、トレーニングだけでなく、人生そのものにも通じています。
多くの人が「もっと頑張らなきゃ」「もっと複雑に考えなきゃ」と自分を追い込んでしまう。
でも、本当に大切なのは、“シンプルに生きること”ではないでしょうか。
余計な力を抜いて、呼吸を整え、目の前のことに集中する。
それだけで、身体も心も自然と整っていく。
NeeDSメソッドの原点も、まさにそこにあります。
複雑な理論を理解することは大事です。
けれど、それを「誰にでも伝わる言葉」に変換してこそ、本当の価値が生まれる。
そして、それを“体感できる空間”をつくるのがNeeDSの使命です。
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■ 結論:本質はいつだってシンプル
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「賢い奴は、複雑なことを単純に考える」
この言葉に出会ってから、私たちはずっと“シンプル”を追求しています。
それは、トレーニング理論だけでなく、NeeDSという組織の在り方にも通じています。
スタッフ同士の会話、クライアントとの信頼関係、教育や経営の仕組み――
どれも根底にあるのは、「難しくしない」「伝わる形にする」という姿勢です。
トレーニングとは、身体を通して“生き方”を学ぶ行為です。
だからこそ、複雑にしない。飾らない。まっすぐ伝える。
それがNeeDSのスタイルであり、理念であり、未来です。
これからも私たちは、どんな時代になってもこの言葉を胸に、
「シンプルの中にある本質」を追い続けていきます。
――
難しいことを簡単に伝える。
それが、NeeDSの「賢いトレーニング」。
そして、人生を軽くする一番の方法です。
【おまけ:稲盛和夫さんの言葉が、私の人生を変えた】
「バカな奴は、単純なことを複雑に考える。
普通の奴は、複雑なことを複雑に考える。
賢い奴は、複雑なことを単純に考える。」
この言葉に出会ったのは、私がすでにプロ野球やメジャーリーグでのトレーナーとしての活動を終え、日本に帰ってきた頃でした。
現場を離れ、少し心に余裕ができたときに、たまたまこの言葉を目にしたのです。
その瞬間、まるで胸を強く殴られたような衝撃がありました。
「俺はバカなやつだった」と。
現役時代の私は、間違いなく“バカなやつ”でした。
簡単なことを、あえて難しく伝えることが「プロっぽい」と思っていました。
専門用語を並べるほど、知識があるように見える。
複雑な説明をするほど、賢そうに見える。
そう信じて疑わなかったのです。
実際、プロの世界では「説明力=権威」と思われる風潮もありました。
私も例外ではなく、難しい理論を使いこなすことで「一目置かれる存在」になりたいという欲がありました。
でも今振り返れば、それは「理解させるための説明」ではなく「納得させるための理屈」になっていました。
本当に相手のためではなく、自分のプライドを守るための説明だったのかもしれません。
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■ プロの現場で気づけなかった、本当の“伝える力”
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プロ野球やメジャーリーグの現場では、選手もスタッフも、超一流です。
一言の重み、動作の一つ、表情の変化、すべてが勝敗を左右します。
だからこそ、私は「正確で、理論的な説明」を求めていました。
ただ、それが“複雑さ”と“賢さ”を勘違いする原因になっていたのです。
私は知識を得ることで満足していました。
「これは解剖学的にこうだから」「筋収縮のタイミングが…」といった説明を繰り返し、
選手に分かりやすく伝える努力を怠っていたのです。
そしていつの間にか、「伝える」よりも「納得させること」が目的になっていました。
それがどれほど選手にとって遠回りだったか――
稲盛さんの言葉に出会ったとき、ようやく気づきました。
あの頃の私は、選手たちに“知識”ではなく“理解”を届けるべきだった。
トレーナーの本質は「難しいことを説明すること」ではなく、
「難しいことをシンプルに伝えて動かすこと」だと、心の底から感じました。
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■ この言葉がなければ、今の自分もNeeDSもなかった
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稲盛さんのこの言葉に出会わなければ、今の自分は存在していません。
そして、おそらくNeeDSメソッドも生まれていなかったと思います。
私はこの言葉をきっかけに、“複雑なものを分解して、シンプルに伝える”という新しい哲学を持つようになりました。
人間の身体は複雑です。
筋肉、骨、神経、感覚――それぞれが連動して成り立っている。
スポーツの動きもまた、無数の要素が絡み合い、完璧な答えなど存在しません。
しかし、だからこそ「単純に考える」ことが必要なのです。
複雑な動きを、ひとつずつ分解して整理し、
“誰にでもわかる形”にして伝える。
それがNeeDSトレーニングメソッドの原点です。
私たちのメソッドは、派手な理論や特別なマシンで成り立っているわけではありません。
「立つ・しゃがむ・ひねる・伸ばす・歩く」――人間が本来持っているシンプルな動きを徹底的に磨き上げること。
どんなスポーツにも共通する“自然な動作”を追求し、
それを誰もが理解できる言葉で説明する。
この考え方にたどり着いたのは、稲盛さんの言葉があったからこそです。
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■ “賢さ”とは、難しい理論を語ることではなく、相手の中に残ること
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私は今でも、トレーナーを志す若い人たちにこの言葉を伝えています。
「複雑なことを単純に考える」――それができる人が、本当のプロだと。
現代は情報があふれ、SNSやYouTubeでも理論やテクニックが簡単に手に入ります。
多くの若いトレーナーが、“知識の量”で自分を証明しようとしています。
しかし、その中で多くの人が迷子になっています。
理論を知っているのに、現場でうまく使えない。
正しいことを言っているのに、クライアントに伝わらない。
私にも、そんな時期がありました。
だからこそ、彼らに伝えたいのです。
「賢いトレーナーとは、知識を難しく語る人ではなく、相手の中に“気づき”を残せる人だ」
選手やクライアントに「なるほど」「できた」「分かった」と言わせられる人。
それが本当の“賢さ”です。
どれだけ勉強しても、どれだけ理論を語っても、
それが伝わらなければ、意味がありません。
NeeDSメソッドのすべては、この哲学の上に成り立っています。
私たちは、どんな人にも分かる言葉で、シンプルに、的確に伝えることを徹底しています。
それが結果につながり、信頼につながり、そして“感動”につながるのです。
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■ 最後に:迷っているトレーナーや指導者へ
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今でも現場では、多くのトレーナーや指導者が“複雑さ”の中で悩んでいます。
もっと難しい方法があるはずだ。
もっと新しい理論があるはずだ。
そう思って勉強を重ね、情報を集め、
結果として、何を信じていいか分からなくなる。
その気持ちは痛いほど分かります。
私も同じ迷路を何年もさまよいました。
でも、出口はいつもシンプルなところにありました。
“立つ、歩く、呼吸する、笑う”
この当たり前の動作の中に、すべての本質がある。
トレーニングも、人生も、シンプルに戻ることで強くなる。
もし今、迷っているトレーナーや技術者の方がいたら、
私はこの稲盛和夫さんの言葉をそのまま贈りたいと思います。
「賢い奴は、複雑なことを単純に考える。」
この言葉を理解し、実践できたとき、
トレーニングはもっと自由になり、人との関係はもっと豊かになります。
そして、あなた自身の人生も、きっと軽くなっていくはずです。
それが、私自身が体験し、今のNeeDSメソッドへとつながった“学びの核心”です。
そしてこれからも、私はこの言葉を胸に、
人の身体と心を“シンプルに整える”道を歩き続けていきます。
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